福島の事故とがん保険についてのうわさについて

生命保険会社に勤める知人が、「最近、ガン保険のCMがなくなったと思わへん?」と。理由を訊いたら、外資系には共通の資料が回って来て、原発事故後のガンの発症率が上がったので売り止めがかかってると。特に0〜6歳の子供達の被爆が指摘されてて、北海道〜関西圏が汚染地域として指定されてると。
http://twitter.com/#!/hosshyan/status/106572842556080128

なんか、このtwitterが「デマ」だとして、ひどく批判されているようです。たしかに、今の段階でがんの発症率が上がっているとは到底思えないので、一見すると「明らかなデマ」に思えます。

ただ、この文脈で「がんの発症率」という言葉が意味しているのは、「将来予測されるがんの発症率」だという可能性はあるでしょう。将来予測されるがんの発症率」をどう見積もるかは難しい問題ですが、保険会社が「将来予測されるがんの発症率」が事故前より高くなった考えているというのが、ただちに「デマ」と言えるほどありえない話とは思えません。

自分は、事故によってがんの発症率が上がるか上がらないかで1:1の賭けがあったら、確実に「上がらない」の方に賭けます。そういうレベルの話であれば、「上がらない」と思います。ただ、事故前と比べて、がんの発症率の予測に、不確実性が生じたのは事実でしょう。たとえば、事故直後に、将来、がんの発症率が上がるかどうかと言われたら、分からないとしかいいようがなかったはずです。こうした状況で、今までどおり、がん保険が売られていたとしたら、それこそ不思議な話でしょう。事故後のある段階で、「今後のがん発生率の動向が予測できないので、販促はほどほどにするように」という通達があったりしても不思議ではないと思います。そして、「動向が予測できない」対象地域として、北海道〜関西が取り上げられていたとしたら、まぁ、妥当な線ではないかと思います。

ちなみに、これについてNATROM氏が、「もし、本当なら、保険料が上がるか販売を指しどめるはず」という指摘をしているようです(id:NATROM:20110825)。これは、保険会社が、「現在のがんの発症率が上がっている」という情報を持っている場合にも、「将来確実にがんの発症率が上がる」という判断をしている場合にも成り立ちますが、「リスク計算の不確実性が増えた」と判断をした場合には成り立ちません。この場合、「様子見のため売り控え→実際には大したことないと分かって通常営業」という流れになる(あるいは、すでになっている)可能性の方が高いので、NATROMさんの指摘は必ずしも当たらないのではないかと思います。

たしかに、この話は陰謀論的に解釈され、「本当はがん発生率が上がっているが、隠されているのではないか」と言う反応を示す人がいそうなので、どうやってもそうは理解できないということを指摘することは大切かもしれません。ただ、少なくとも「どう考えてもデマ」と言えるほどおかしな話ではないということは、同時に理解しておかないといけないのではないかと思います。

まぁ、この時期にこの話をリークすることが、マーケティング上の理由によるかもしれないという仮説は、それなりに信憑性が高そうだとは思いますが…